第7回
● 情報処理から自然のなかでのものつくり、アートも視野に!  
杉原 保幸(理学5S/電子研究室・長野県大町市在住) 5DEC.2008
【白馬自然科学研究所 西丸震哉記念館 代表】 

  今回ご登場の杉原さんは信州大学卒業後、千葉大学と都立大学(現首都大学東京)の大学院に学び、教職などの社会人の経験を経たのち、現在は仁科三湖の木崎湖畔で上記記念館を民間個人として運営されています。この夏にお邪魔しましたが、そのカフェで出されたカレーとナン(奥さんの特製)が、とても美味だったのが忘れられません。杉原さんのいまに至る軌跡と“現場”について、以下に綴っていただきました。 

 * * * * * * * * * * * * * * 

 私、杉原は信州大学理学部に1970年入学の5Sです。この夏、同期物理科入 学の5人の友人と戸隠高原の宿で、飲みながらアコーデオンの演奏で学生時代 の懐かしい歌を楽しみました。職業は教員が3名、企業の研究員1名、その他 2名と教育職がやはり多いです。

 一方、信大の自然科学研究会で一緒に活動した同期の友人は大町市の居谷里湿原で野鳥の鳴き声を録音などしていましたが、北関東の医学部で研究・教育職についており、他にも同様なポストにいる方もいるようです。

 戸隠の宿では、物理学科らしく素粒子についての最新の話題も出ていたのですが、私にとって埒外の内容でした。私は、物理学を自然科学の基礎と考えて、 物理学科に入学していたので、興味の対象はすぐに気象学や気候学などへと移 行し、それらのデータ解析から情報処理教育を専門とするようになっていたか らです。その経緯を次に紹介させていただきます。

 信大電子研では鷺坂先生にお世話になりました。気圧の精密計測についての卒論において相関係数の計算(6Sの太平君が担当)は大型計算機の紙カード でのバッチ処理でした。そして研究生として海洋研究所で初めての投稿論文の データ処理も同様でした。千葉大園芸学部での修士論文においてはHPのプログ ラム電卓、および紙テープでロードするミニコンがデータ処理ツールでした。 その後、農水省のグリーンエナジー計画での水稲の気候生産力のマッピングは 磁気テープやリモート端末処理による大型計算機からラインプリンタへのドッ ト数値出力でした。

 1983年、まとめて入った奨学金80万円程で購入したPC9801Eフルセット(8インチフロッピードライブ、プリンタ付、現在も手元に保管)は研究に役立つの みならずNHKなどでのアルバイトの収入源ともなりました。都立大での博士論 文を、なぜかNEC8001(暗室に置かれていた)上のワープロソフトで、作成し た記憶が残っています。

 奨励研究員として一定の成果も得、都立大で大変お世話になった先生の、「学位を取ったら専門分野にこだわらず研究者としての基礎ができたということで、新しいことにも挑戦しなさい」との言葉もあり、35歳過ぎて奨学金免除機関のシンクタンクで、やっとサラリーマン社会人となりました。都立大の院生室やその周辺(「凡人のための学習研究法」という本は信大理学部時代に既に読んでいた)で言われていた学位、就職、結婚の理想形(?)とはかなり違っていました。

 2年半のシンクタンク生活は、ある程度フレックスタイムが利き、子育てには便利でした。また、通産官僚・ジェネコン・エネルギー産業などの方々と仕 事ができたことは良い勉強でした。仕事のツールはパソコンで、当時10メガの ハードディスクが30万円もしていたことを覚えています。しかし、受託研究機 関では自分のやりたいテーマの設定はできませんので、都立大・気象学会の先 輩から話をいただき、群馬県の短大での情報処理関係の教員を16年やってきま した。

 2004年5月からは、母親の介護のこともあり、大町市の木崎湖畔に移り住み、父親の代から永年ご指導いただいてきた食生態学者西丸震哉先生の記念館の設 立準備を始めました。手作りにこだわり、建物作りから内装、展示棚や額縁ま で手がけてきました。

 今年(2008年)、5月3日には西丸先生に講演をしていただき、オープニングパーティを無事迎えることができました。小規模な展示館ながら、「カンオ ケに入ったときやりたいことはかなりやったなァ、とニンマリできる自分であ りたい」という西丸先生の生き方などに啓発された方、山や自然に関心があり 好奇心旺盛な方には、くつろげる空間ができつつあるのではないかと考えてい ます。

 11月29日には、安曇野アートラインのシンポジウム「アートで街づくりは、どこまで可能か!」で、美術の授業でお世話になった仁科先生のお話を38年ぶ り聞けました。これからはレイクサイドギャラリー・西丸震哉記念館の地域に 根ざしたありかたを積極的に考えるところまでやっと来たなと感じています。

 木崎湖方面にお越しの節は、お寄りいただければ幸いです。

                         以上

● 関連WEBサイト ●
西丸震哉記念館 http://park20.wakwak.com/~snsl/nishimarukan/




●「信州大学物理同窓会」事務局●

◎ご質問・ご連絡はメールまで。